名探偵シャーロック・ファームズは、ウイスキー…ではなくビールがお好き。ある日、ベルガモットやブラッドオレンジを使ったクラフトビールがあると聞いて飲んでみた。すると、果物の風味がこんなにもビールに合うのだと知ってびっくり! いったいどのようにして果物がビールになるのだろうか。好奇心旺盛なファームズは、さっそくビール醸造所に潜入を試みた。
今回調査したのは、伊豆韮山にある「反射炉ビヤ」。反射炉ビヤの隣にある韮山反射炉は、ユネスコの世界文化遺産でもある歴史的な場所。ペリー来航で幕末の日本は脅威にさらされ、大砲を鋳造するための反射炉が建てられた。実際に使われていた日本の反射炉の中で現存しているのは韮山反射炉だけなのだとか。そんな重要な場所で、酒蔵や茶屋、BBQ場などを運営してきた蔵屋鳴沢が創設したビール醸造所が反射炉ビヤだ。
反射炉ビヤは、歴史にちなんだ定番商品から、果物やお茶などを使った個性豊かな限定商品まで、無数のビールを作ってきた。そんな反射炉ビヤの工場内を専務の方に案内していただき、ビール作りの謎を紐解いていこう!
調査1:ビールの原料「モルト」とは?
ビールの基本原料は、麦とホップと酵母と水の4つ。まずはビールの味を大きく左右するモルト(麦芽)を見せていただくことに。
モルトは、麦を発芽させ雑味を抜き乾燥させたもの。ビールの心臓となるベースモルトと、ビールの色や風味を出すスペシャリティモルトがあり、それぞれにたくさんの種類がある。
モルトはそのまま食べられるらしいので、数種類のモルトを少しずついただいた。ベースモルトであるマリスオッターはグラノーラみたいな味。これを使うとビールにコクが出やすいらしい。エクストラペールはクリスピーで、ビールにキレが出る。スペシャリティモルトにもコーヒーみたいに香ばしいモルトや、酸っぱい味のモルトなどがあるらしい。同じモルトでも、それぞれの味が全然違って面白い。たくさんの種類のモルトを巧みに使い分けて、個性的なビールを生み出していくのだ。
調査2:大きなタンク、かっこいい!
ビール作りの次の工程は、モルトを粉砕器で砕き、湯に浸して麦の粥を作る。それをろ過してホップ(ビールに香りや苦味をつけるアサ科の植物)を投入。煮沸して冷却し、約1ヶ月間発酵・熟成させたらビールのできあがり。ホップは煮沸のタイミングではなく、発酵のタイミングで投入する場合もある。
反射炉ビヤには大きな発酵タンクが並んでいる。発酵タンクから出る空気を嗅がせてもらうと、爽やかなホップの香りとともに硫黄の匂いがかすかに香る。この段階で必要のない香りや苦味をとっていく。ビールの味のバランスを決める重要な工程を、この発酵タンクが担っているのだ。
調査3:どうやってビールに果物を混ぜるの?
反射炉ビヤでは、果物をビールに入れる場合、元々あるビアスタイルを派生させてオリジナルのビールを作る。
例えば、ベルガモットを使ったビール「粉雪ベルベル」の場合、ベルジャンホワイトというビアスタイルが元となっている。ベルジャンホワイトはコリアンダーやオレンジピールなどが使われる爽やかなビール。「ベルジャンホワイトにベルガモットを足してみたら面白そう」という発想から、原料を再構成しながら試行錯誤してビールを作り上げる。
さらに、反射炉ビヤでは果物の果汁だけでなく皮まで使用する。元々完成されているビアスタイルに新しい材料を追加するのはとても難しいらしいのだが、それでも無数のオリジナルビールを作ってきた実績は反射炉ビヤのブルワーさんの手腕があってこそだ。
ビアスタイルとは
ビアスタイルは、ビールの種類のこと。皆さんは「エール」「ラガー」という言葉を聞いたことはありませんか? ビアスタイルは、発酵の温度の違いでエールとラガーにざっくり分けられ、その中に無数のビアスタイルが存在します。クラフトビールを飲むときはビアスタイルを意識すると、自分の好みのビールを見つけやすくなります。
反射炉ビヤでは、自分たちの足で畑を訪れてビールに使用する農作物を実際に手に取るという体験を大切にしているらしい。そうすることでビールを作るという仕事にリアリティが生まれ、反射炉ビヤにしか作れないこだわりの商品をたくさん生み出してきた。幕末からの歴史を守り続けるだけでなく、意欲的に行動して新しい商品を作り続ける反射炉ビヤ。
ファームズは思った。
「その精神が美味しいビールを作るのだ」
反射炉ビヤの精神を見習って、これからも探偵として色々な果物の秘密を追求していこうと決意するファームズであった。
Information
反射炉ビヤ
住所:静岡県伊豆の国市中272-1
オンラインショップ:https://hansharo-beer.stores.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/hansharo_beer/
TEL:055-949-1208