教訓などを含んだ昔からの言い回しの「ことわざ」。言葉のリズムがよく、覚えやすいものが多いけれども、納得したり…共感したりと、心に響く言葉が多く存在しています。
そんなことわざですが、実は5万〜6万もの種類があるとされています。そんな中で私たちに馴染みのある3つの果物が題材となったことわざ「桃栗三年柿八年」の意味や由来を「果樹栽培の原理」と合わせて紹介したいと思います。本当に桃栗は3年で実をつけるのでしょうか?
桃栗三年柿八年の意味
このことわざは、果樹を植えてから実がなるまで(収穫まで)の年数を並べたものです。実がなるまでに「桃」と「栗」は3年、「柿」は8年もの年月を要します。
相応の歳月を待たねばならないことから、「物事は一朝一夕にできるものではなく、何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかる」という意味が含まれています。すぐに目に見える結果が出ないからと諦めそうになった人を励ます意味合いで使われることがあります。
年数は「幼若期」のこと
植物の生育は大きく2つ、「幼若期(ようじゃくき)」と「成熟期」に分けることができます。種子から発芽した樹木は一般に、発芽後数年から数十年は決して花をつけない性質があり、この花をつけない期間が「幼若期」と呼ばれます。
「桃栗三年柿八年」とは、この「幼若期」のことを指しています。
種子から発生した幼樹は、何年もの歳月をかけ、光があたる高さを求めて上に伸びます。ようやく日光を浴びれるようになったところで、花をつけ、実を成らすようになるので、「桃」や「栗」「柿」をはじめとした果樹は、実がなるまで(収穫まで)に年数がかかります。
本当に収穫まで「桃栗3年柿8年」なの?
おおまかことわざ通り「桃」や「栗」は3年で、「柿」は約6、7年で実を収穫することができます。
収穫ができるようになるまでの年数としての「桃栗三年柿八年」はことわざ通り、大体合っていることになりますが、日本の果樹栽培の実際を考えると果実の収穫にはそれ以上の年月が必要です。
美味しい果実はそれ以上
実際のところ、私たち消費者の手元に届くお店で売っている果実は、「桃栗三年柿八年」以上の年月をかけたものが商品として販売されています。
若いうちから無理に実をならせることは、長い目でみたときに樹の成長に決して好ましいことではないので、若いうちは摘果と呼ばれる実を間引く作業が実施されています。早いうちから果実を実らせると、美味しくない果実ができるだけでなく、木が弱って栄養が十分にわたらず果実がならなくなってしまいます。
高品質でかつ、経済寿命が長い果樹を作ることが生産者の経営として重要なため、消費者が食べるような果実を育てるためには、収穫樹齢を迎えるまでの+3~4年以上の時間がかかったものということです。