炭素循環農法は、近年注目されている自然の力を利用した農法です。農薬や化学肥料を使わず美味しい野菜が作れるという炭素循環農法。肥料を使う一般的な農法との違いは何でしょうか?炭素循環農法のメリットやデメリットは何でしょうか?
今回は、川崎市麻生区で野菜や果物を生産する農園・AUGANICSを訪問。「安心して美味しいものを食べてもらいたい」と語る高松克行さんに炭素循環農法について教わりました!
AUGANICS・高松克行さんへのインタビュー記事はこちら
→https://korekara-noto.com/interview/auganics/
炭素循環農法って何?
編集長:
無農薬栽培などはよく耳にするのですが、炭素循環農法というのはあまり聞き馴染みがありません。どのような農法なのですか?
高松さん:
簡単に言うと「微生物たちの餌を作ってあげる農法」です。例えばチップなどが餌になるんだけど、それをある程度発酵させたら土に入れるわけです。そうすると糸状菌という菌が増えて、野菜にいい影響を与えてくれます。
編集長:
一般的な農法と比べて何が違うのでしょうか?
高松さん:
化学肥料は窒素を多く含んでいて、それが野菜を成長させます。でも、微生物たちもご飯を食べると窒素を吐き出す。だから、化学肥料を使わなくても、微生物たちが暮らしやすい環境を整えてあげることで、野菜がよく育つんです。
編集長:
人が自然の循環を促す役割をするんですね! 微生物の餌となるチップは具体的にどのように作るのですか?
高松さん:
剪定した枝や木を機械で粉砕して、発酵させてから土に入れます。これは僕が作ったチップを土にまく機械です。チップをこの中に入れて、草刈機に無理やりジョイントして、走りながらチップを落とすという画期的な発明。名付けて「チップがデール」。でも結局チップが出なくなったり、タイヤが取れたりして…。一時期この界隈を賑わせたんですけど、今は幻の存在になってしまいました。
編集長:
チップがデール…(笑)。復活を渇望します。
高松さん:
他にも、コーヒーかすや、おがくず、きのこの菌床なども微生物たちの餌になりますね。近所のコーヒー屋さんにコーヒーかすをもらったり、麻生区で防空壕キクラゲを栽培している方にいらなくなった菌床をもらったりしています。
(左:剪定した枝や木、右:機械で粉砕したチップ)
(左:きのこができる元となる菌床)
編集長:
ゴミとして捨ててしまうものも、野菜の栄養になるんですね!
高松さん:
中に微生物や菌がいっぱいいるんですよ。
メリットとデメリット
編集長:
炭素循環農法で育てた野菜の特徴はなんですか?
高松さん:
やっぱり味がすごく美味しいです。
あとは、野菜が虫に食われないこと。いい土を使って育てた野菜は強いので、虫が食べても消化しきれないんです。化学肥料を使うと野菜が甘くなるので虫に食べられてしまう。だから農薬をまく必要が出てきてしまうんだけど、土が元気な状態で育った野菜には虫がつかないんです。化学肥料も農薬も使わずに立派な野菜が育つ、これが炭素循環農法の真髄ですね。
編集長:
自然の力で育った野菜はそんなに強いんですね。
高松さん:
よく冷蔵庫とかに葉物野菜を入れておくと、ドロドロになっちゃったりするときがあるでしょ。炭素循環農法の野菜はそういうことが起こらず、ただ縮んでいくんです。
編集長:
逆に、炭素循環農法のデメリットはありますか?
高松さん:
土作りから始めるから時間がかかることですね。僕の畑では3年目くらいからやっといい野菜が収穫できるようになりました。
土づくりと助け合い
編集長:
高松さんは炭素循環農法をどのように勉強したのですか?
高松さん:
師匠がいるんです。知り合ったのは5、6年前。この地域で長く炭素循環農法をやっている方なんだけど、まさかそんな人が近くにいるとは!
編集長:
ご縁ですね!
高松さん:
本当に色々な人に助けられていますね。この畑はもともと水はけが悪くて、溝を掘ったんです。近所の方にたくさん竹をいただいて溝の中につめて、水の通り道を作りました。その後、窒素を固定させるために高きびなどの雑穀類をまきました。チップもみんなで駆けずり回って入れました(笑)。それを見かねた近所の方が、大きな機械を持ってきて一気にチップをまいてくれて。畑がぐっとよくなって、野菜もたくさん育つようになりました。そうやって助け合って頑張っています。
編集長:
ありがたいですね! やっぱり高松さんは土づくりを大切にしているんですね。
高松さん:
はい。種まきや収穫よりも、土作りが一番好きですね!