なぜ剪定が必要?剪定をして果物を育てる目的と枝木が切られる意味は?その基本的な4つの理由【果樹栽培】

枝を切る「剪(せん)定」。なぜ特定の樹形を作る必要があるのでしょうか。なんとなく大事だという認識がある剪定ですが、栽培している果樹を野生のままの状態にする、無剪定にして自然のままの生長に任せることが、どのような影響をもたらすのでしょうか。そして、なぜ無剪定ではダメと言われているのか。果樹栽培に「剪定が必要な理由」を4つ紹介したいと思います。

果実を全面に成らせる

剪定をして特定の樹形に育てる目的のひとつに、「多数の果実を全面に成らせる」ことがあります。

剪定をしないでそのまま自然の形で樹を育てると枝が伸び放題になり、樹の内部に太陽光が届かなくなるため、葉も果実もつかずに内部が空洞化してしまいます。樹の外側だけに花芽がつき、主幹から遠い枝先は生長が弱いので、果実も小玉にしかなりません。

よい果実がならない非生産的な枝ができないように、樹冠内部に日光が入るようにすること、つまり「果実が成る枝を樹冠全面に満遍なく配置する」ことが、果樹栽培にて剪定が必要な理由の一つになります。

用語解説:花芽(はなめ)

生長して花になる芽のこと。果樹は、花が咲いて受粉することにより実をつけます。花を咲かせる芽は、花を咲かせない芽と区別して「花芽」と呼ばれています。

作業しやすい樹をつくる

果樹は自然のまま育てると、樹高が7~8メートル、あるいはそれ以上になってしまいます。木が大きくなりすぎると、どうしても収穫や管理ができなくなってしまい、高い位置での脚立を使った怪我などの恐れも出てきます。

剪定することで、可能な範囲で樹高を低くおさえ、「栽培管理の作業しやすい樹」をつくることも果樹栽培の重要な条件になります。

新しい枝を発生させる

剪定には「木の生育を促す目的」があります。木も生き物なので、果実をつけすぎてしまえば栄養が木の生長に使われずに、枝の勢いが衰えてしまいます。新しい花や実に充分な栄養を届けるためにも、古い枝や伸びすぎた枝を切り落としてあげることが重要です。

枝を切れば、新梢(しんしょう:枝や幹から新しく伸ばした枝)の生長が影響を受け、新しい枝が伸びてくるので、全体の生長や結実のバランスが整い、果実の品質向上にも繋がります。古い枝を新しい枝に置き換える「枝の更新」を行うことが、剪定に必要になってきます。

病気や害虫を予防する

剪定をしないで枝が混み合う状態になると、風通しや日当たりが悪くなるので、一般的に病害虫の発生が多くなると言われます。湿度の高い環境では、果実の外観品位を損ねる菌類や細菌類の感染を助長してしまうので、「病害虫対策・予防」の観点からも、風通しや日当たりの確保をするためにも剪定が必要になってきます。

また、樹に残っている枯れ枝には「黒点病」の発症の原因になる病害菌が発生する可能性が高く、その伝染源を断つためにも、樹冠内部の日照をよくする剪定が必要です。

用語解説:黒点病

枝、葉、果実に小さな黒斑ができる病気。枯れ枝に存在する病原菌が果実に感染すると、果皮が防衛反応を示して、その部分に黒い点が発生します。果実の外観品位を損ねる主要な病気として知られます。
内山 恵太

内山 恵太

2000年生まれ、北海道出身。広告代理店で制作業務を担当した後、フリーランスのデザイナーとして独立。現在は、デザイナーとして活動する傍ら、神奈川県小田原市の150年以上の歴史を持つ柑橘農園の研修生として農業を学んでいる。果物が大好きで、特に柑橘が好き。おうちにBarのような酒棚をつくるほど、カクテルを作るのがすき。

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