#5 これからの〜と編集長・内山恵太〜直感と夢を大切に、農業で人々を魅了する〜

憧れの人を見つけてよく観察し、驚くようなスピードでその人物の魅力を吸収していく。憧れる対象は知人や漫画の登場人物、ペンギンなど多種多様。「これからの〜と」の編集長・内山恵太は、憧れることの天才である。それゆえに編集長の魅力は常に進化し続け、その底知れなさが人を惹きつける。

編集長は大学卒業後、フリーランスのデザイナーとして川崎市で活動している。デザイナーという枠にとらわれず、バーの営業やイベントなど地域に密着した活動を続けてきた。23歳になって自身のやりたいことを見つめ直し、たどり着いたのが農業だった。

「いずれは僕が憧れられる存在になりたい」と語る編集長。どのようなきっかけで農家を志すようになったのか。”憧れの人”になってどのようなことを実現したいのか。ピクニックをしながら編集長の夢にあふれた想いを伺った。

農家を目指す4つの材料

①りんご農家の祖父母

「父の実家が長野県でりんご農家をやっているというのは、きっかけのひとつとして外せないと思います。それは農家を志すことにおいて強い自信に繋がっている気がするんです。りんごの収穫の時期になると手伝いに行っていたんですけど、当時はおばあちゃんおじいちゃんの家に遊びに行くという感覚でした。大きくなってから経験した様々な出来事がそのルーツとマッチしたかんじですね!」 

編集長が農家を目指すようになったきっかけは4つあると言う。まず1つ目は、祖父母がりんご農家であるということ。幼少期から農業に興味があったわけではないが、農家という存在がそばにあった影響は大きい。

②デザインとの出会い 

北海道で生まれ育った編集長は、大学入学を機に上京。大学1年生のときに、川崎市で広告代理店を経営しているTさんに出会う。それが2つ目のきっかけに繋がることに。

「こんなに面白い人いるんだって思ったのが、最初の印象。すごく楽しそうに仕事している人なんです。デザインをやり始めたのもその人への憧れが大きい。そういう人になりたいと思ったら、真似してみるということを大事にしています。オリジナリティや僕らしさって、真似したあとに出てくると思うから。独学で必死にデザインを勉強しました」

地元の学生を巻き込んだり、街のイベントを主催したり。自分の力で物事を動かしていく物語の主人公のようなTさんの生き方に憧れて、個人事業主になろうと決意。その後Tさんとは一緒にバーで働くことに。編集長はTさんのように「誰よりも楽しそうな農家になること」と「主人公のように物事を動かせる農家になること」を目指している。

③マルシェの主催

そして、3つ目のきっかけは大学時代に開催していたマルシェでの経験。コロナ禍で人との繋がりが減っていく中、街の魅力を作る活動をしたいと考えた編集長。Tさんに相談し、「ヒトとモノとコトが動くマルシェ」をたった3日の準備期間でやることに。右も左もわからないまま一人でゼロからマルシェを主催。デザインの知識を活かしながら近隣の飲食店の商品を街の一角のテントで販売していた。そしてあるとき、川崎市の人気店「ベーグルカンパニー」に誘っていただき、祖父母のりんごを使ったベーグルを作ってもらった。

(祖父母のりんごを使ったアップルシナモンクリームチーズサンドとアップルパイ)

「マルシェをやっているときに、美味しかったですとか、学生の方が頑張っているのを見ると元気が出ますとか、手紙やSNSでメッセージをくれるお客さんがいて。ベーグルを作ってもらったときも毎日のように買って応援してくれる人たちがいました。商品を届けるということの喜びを体感できました!」

④バーでのオリジナル商品提供

自分の手で販売したものを喜んで食べてもらう幸せは何事にも代え難いと感じた編集長。そして、4つ目のきっかけであるバーでの体験が、その想いを強くしていく。編集長が働いていたバーでいちごや梨など旬の果物を使った毎月の限定メニューを始めることに。

「自分が作った商品を目の前にいるお客さんに楽しんでもらう経験はすごく貴重でした。それが一番楽しかったですね! 商品の魅力が伝わるポップをデザインしたり、注文してもらったときにこだわりを話したりという体験を経て、僕はこういうことがやりたいと思いました」

自分で商品を作る。商品の魅力が伝わるデザインをする。買ってくれたお客さんに喜んでもらう。それらを全て叶えられるのが、自身のルーツである農家なのではないかと気づいた編集長。こうして少しずつ農業に興味を持っていった。

「果物の特徴を最大限に活かせるようなデザインやパフォーマンスをしたいです。商品の魅力を伝えて、さらに価値をプラスしていけるような人になりたいです」

消費者心理を見据えた広告に興味がある様子の編集長。なぜデザインだけではなく農家として農作物から作りたいのか。それは好奇心いっぱいの編集長らしい答えだった。

「やっぱり自分が作ったものには想いがこもる。欲張りかもしれないけど、わくわくすることは全部やりたいです!」

パフォーマンスで農業革命!

こうしてマルチな農家を目指すようになった編集長。しかし農業の知識はなく、祖父母以外に農家の知り合いもいなかった。だから編集長はまず農業という職業について様々な農家さんに聞きに行くことに。

「どんな農家になろうか考えたときに全く想像がつかなかったので、まずはどんな農家さんがいて、どういう想いでやっているのかを聞きに行っています。今まで何人かの農家さんと会って、農業でも自分らしく勝負していいんだと思うことができました」

そして、農家さんに聞いた貴重なお話を独り占めするのではなく、せっかくなら農家さんの魅力を知ってもらえるようにメディアにしようと思い立つ。文章と写真で農家さんのかっこよさを最大限に表現したい。こうして農業Webメディア「これからの〜と」が誕生した。メディアを立ち上げて2ヶ月、編集長は農業という分野で将来どのような役割を果たしたいと感じたのだろう。現段階の目標を伺った。

「誰よりも楽しそうな農家になって、農業ブームを作りたい! みんなYouTuberなどに憧れるけど、それはたぶんやりたいことを楽しそうにやっているからだと思うんです。僕は農業をそこまで持っていきたい」

とにかく楽しそうな新規就農者として注目してもらいたいと語る編集長。昔はりんご農家の祖父母を見て、農業は大変だというイメージを持っていた。そんな農業に対するイメージを自身のパフォーマンスで変えていけるかもしれないと言う。

「僕のパフォーマンスを見て農業に興味を持ってもらいたい。農業をやりたい人がインタビュー記事を見てくれるかもしれないし、果物のことを調べるきっかけになるかもしれない。農業の入口として圧倒的な存在になりたいです!!」

そんな編集長は「いい嘘つきになりたい」と語る。例えばいちごの写真を撮るとき、瑞々しさを表現するために周りに水滴を散らしたり果実を添えたりする。実際にいちごを食べるときにそのような装飾はしないが、写真では味覚の代わりに視覚で美味しさを表現するためにそういう工夫をする。

「写真の限られたフレームの中で何をどう配置するか工夫することって、リアルではないから、若干嘘つきだと思うんです。でもそういう見せ方をしたほうが興味がわくし、想像も膨らむでしょ? それと同じように、商品を紹介したり、農家さんの働き方や僕の生き方を見せたりするときに、夢のあるパフォーマンスをしていきたい」

人を騙すのではなく、人に夢を与える”嘘”を目指す編集長。それはある種のロマンだ。編集長がそう考えるきっかけとなったのは『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』という映画だった。

「映画をみたときすごくわくわくしました! 主人公のウォンカはマジシャンで、空飛ぶチョコレートを作ったり、全てがチョコでできているテーマパークみたいなチョコレート屋さんを開いたりする。そういうマジック的な表現をみて、やっぱり夢っていいなと思えたから、僕もわくわくするような夢を大事にできる農家になりたいです」

編集長の夢リスト

「ペンギンも信じれば空を飛べる!」日頃からそう語る編集長にとって、空を飛ぶとは具体的にどのようなことなのだろう。現段階で想像しているやりたいことを伺い、編集長の夢リストを作成してみよう。

その1:WAKAMONO NOKA(若者農家)47を立ち上げる

全国47都道府県の若者農家のコミュニティを作って、農業を底から盛り上げていきたい。全国各地の農家さんと繋がって、名産品を使った展開をしていけたらと思っている。あとは、新規就農って大変だと思うから仲間がいると心強いし、若者の農家がフィーチャーされる仕組みを作りたい!

これは、ここ1年以内でスタートさせるぞ〜!(まだ研修もしてないし、農家にもなっていないんだけどね)

その2:DASH村みたいな場所を作る

例えばうどんを作るとしたら、材料を全部自分でそろえてオリジナルのうどんを作りたい。そういうことが1箇所でできる場所を作って、色々な人に見てもらいたい。

その3:作った果物を食べてもらえる飲食店やバーを開く

例えばレモンだったら、レモンサワーやレモンピザ、カルパッチョなど、レモンにフィーチャーした飲食店をやりたい。長野県のりんごを使うお店とか、北海道のじゃがいもを使うお店とか、日本各地それぞれの名産品を使ったメニューを作りたい。デザインの知識を活かして、加工品も作って売りたい。

その4:直売所をおしゃれにして、農園をデートスポットにする

農家さんがいて、作っている果物があって、その場で食べられる環境をもっと活かしたい。お客さんたちが自由に料理をしたりバーベキューしたり。僕自身、農家さんの取材をしていて楽しいから、もっとデートスポットとして成立すると思う。農園デートを流行らせたい。

その5:海外の農園で働く

シチリアでレモンを育てたり。あまり日本人が海外で農業をしているイメージがないから。それに、なんか楽しそうだから(笑)。地中海とレモンと僕ってサイコー! 日本でとれない果物にも興味があるかな。

その6:レモンだけで生活する

昔の海賊はレモンで必要な栄養をとっていたから、僕もやってみたい。レモンからとれるガスがエネルギーになるかもしれないし、もしかしたらレモンだけで生きていけるかも(笑)。

その7〜その100:あまりにも多いので省略

「やりたいことは無限にあります! 馬鹿げたこともあるけど、やってみたいなと思うからやる。ぶっ飛んだ人の話を聞いたらわくわくするじゃん。それがその人の魅力にもなるはずだから、馬鹿げたことも大切にしていきたいです」

たしかにぶっ飛んだものもいくつかあるが、編集長の夢にはロマンがある。編集長の好きな作家・森見登美彦の作品には、よく「見どころのある少年」が登場する。ちょっと気が散りやすいけど、冒険を恐れず自分の心に正直で好奇心いっぱいな少年たち。編集長にそっくりな少年たちが登場する作品の中でも、編集長の一番のお気に入りは空飛ぶペンギンの物語『ペンギン・ハイウェイ』である。

「ペンギンは空を飛べないけど、それはペンギンが空を飛ぼうと思っていないからかもしれない。でも僕は飛び方を教わるために鷲に会いに行くペンギン。あとはそれをどう実現していくか。ただの夢物語にならないように、農業というジャンルに飛び込みました。まずは農業の研修をしなきゃね。いつか空を飛べると信じています!」

編集長が空を飛べるようになるまでの過程を見守りたい方は、ぜひ編集長ブログやインスタグラムをチェックしてみてください!

編集長インスタグラム
https://www.instagram.com/korekara_noto.keita/

藤井 叶衣

藤井 叶衣

1999年生まれ、岡山県出身。映画・ドラマなどの最新エンタメ情報サイトで企画・編集・ライティングを経験し、会社を辞めて神奈川県小田原市へ移り住む。すべての映画と、ほとんどの音楽と、ほとんどの本と、すべてのお酒が好き。あとは、星が綺麗な冬の夜が好き。