今こそ柑橘を食べて豊かな健康効果を期待しよう!温州みかんや他の柑橘類に含まれる代表的な栄養素と機能性成分

なんとなく「体に良い」イメージが定着している柑橘だが、中国では古くから柑橘の果皮を乾かした陳皮が漢方として用いられ、ヨーロッパの植民地争奪戦争ではレモンが壊血病を防いだことで知られるように、柑橘類に含まれる栄養素は健康に様々な良い効果をもたらします。

近年では、柑橘類全般で機能面での研究が進んでおり、美容・健康分野で注目を集めています。今回は、そんな柑橘に多く含まれる代表的な栄養素とその機能性(効果)に着目していきたいと思います。

コラーゲンを生成する「ビタミンC」

アスコルビン酸としても知られているビタミンCは、皮膚や細胞のコラーゲンの生成に不可欠な栄養素です。コラーゲンと聞くと、肌の健康に効果的なイメージが強いですが、骨や血管など体のありとあらゆる場所で細胞と細胞をつなげる(形態保持の)役割を担っています。

そのほかにも、ビタミンCは鉄の吸収促進や免疫力の強化、体内に侵入した異物を代謝する酵素の活性化、抗酸化作用による心疾患予防、日ごろからストレスへの抵抗力を高める効果も期待できるといったさまざまな役割を持っています。

ビタミンCは人間の体のなかでは生成できない栄養素なので、ビタミンCを柑橘類などの食品から摂取する必要があります。また、ビタミンCが不足すると血管がもろくなり、貧血や筋肉減少、皮下出血などの症状のある「壊血病」を招きます。

ビタミンCのはたらき

がんのリスクを低減 / コラーゲンの生合成 / 老化の防止 / 不皮膚や粘膜の健康を助ける / 抗ストレスなどの抗酸化作用を持つなど

海の疫病-壊血病

大航海時代、さまざまな困難の中でも特に深刻だったのが、広大な太平洋上で船員たちを襲い、多くの命を奪った壊血病でした。歯肉が腫れて出血...古傷の開き...
ビタミンCの摂取不足によってコラーゲンが生成されないことが原因。人間は体内でビタミンCを作ることができないので、ビタミンCが豊富に含まれ、回復効果のあるレモンは、「海の疫病・壊血病」に対する最良の薬。大航海時代に無数の命を救ったという歴史があります。

参照:「食」の図書館『レモンの歴史』(第4章-レモンの栄養学),2014

エネルギーの源「クエン酸」

クエン酸は主に、レモン、グレープフルーツなどの柑橘類や梅干し、酢などに含まれる酸味成分です。生物が生きていくためにはエネルギーが必要なのですが、クエン酸は、体を動かすためのエネルギーを生成する代謝経路(クエン酸回路)の中心的役割を担っています。

そのほかにもさまざまな働きがあることが知られていますが、疲労物質である乳酸を体内で分解して新陳代謝を促進してくれる働きが知られています。「疲れた時は酸っぱいものを!」と言われるのはこのためです。

クエン酸が不足すると、エネルギーに変えることができなかった成分が疲労物質の乳酸になり、それが蓄積され、それによって疲労しやすくなったり、疲労の回復が遅くなる症状を招きます。

クエン酸のはたらき

疲労回復・筋肉痛の防止 / 新陳代謝の促進 / ミネラル吸収促進・老化予防 / 食欲増進 / 夏バテ予防 / 美肌作用など

天然のゲル化剤「ペクチン」

ペクチンは、柑橘類の皮の内側のワタやスジ、実を包んでいる袋部分に多く含まれている食物繊維の一種です。水を多量に吸って細胞をつなぎ合わせるセメントの働きを持ち、糖類と酸を適量に混合して加熱することで、ゼリー状に固まる(以下、ゲル化)性質を持っていることから天然の「ゲル化剤」と言われています。

私たちが日頃、口にするジャムのとろみは、ペクチンによるものです。スーパーなどで販売されるジャムには、原料の果実に含まれるペクチンだけで程よくゲル化することが難しいため、ペクチンが加えられていることがあります。

そほのかにも、人間の体内では、水に溶けるとゼリー状に固まる性質があるため、体外へ排出しやすくする働きや便をやわらかくすることで便通を促す働きも期待されています。

ペクチンのはたらき

腸内環境を整える / 便秘・下痢の解消効果 / コレステロール吸収の抑制 / 血糖値の上昇を抑える / 動脈硬化の予防など

酸化ストレスから身を守る「β−クリプトキサンチン」

β-クリプトキサンチンは、温州みかんに特異的に多く含まれている「カロテノイド」と呼ばれる黄色または赤色の色素成分です。生活習慣病の発症には、酸化ストレスが関与することが多くの研究で明らかになっていますが、みかんなどの柑橘類の皮に含まれる色素成分「β-クリプトキサンチン(カロテノイド)」には、酸化ストレスから身を守る高い抗酸化力を持つため、さまざまな病気の予防に役立つのではないかと考えられています。

私たち動物はカロテノイドを生成することができないため、植物や一部の動物などが合成したものを摂取する必要がありますが、吸収されると血液の循環によってさまざまな臓器中に運ばれるので、がんや虚血性心疾患などの生活習慣病の予防効果が期待できます。

β-クリプトキサンチンのはたらき

骨粗しょう症の発症リスクを抑える / 糖尿病の促進を抑制 / 生活習慣病やがんのリスクの低減 / 内臓脂肪の低減 / 美白効果など

漢方医学と「ペスペリジン」

ペスペリジンは、柑橘類の果皮に多く含まれている栄養素で、ビタミンPとも呼ばれるポリフェノールの一種です。ポリフェノールは植物特有の生体成分で、植物の樹皮や表皮に多く含む、苦味、渋味、色素の成分となっている化合物の総称です。

ペスペリジンには、酸化によってもたらされる害を防ぐ「抗酸化作用」を持ち、その抗酸化作用は活性酸素(※必要以上の増加で、正常な細胞を傷つけ、生活習慣病の引き金になる)を除去し、さまざまな病気への抵抗力や老化防止の効果が期待されています。

ペスペリジンのはたらき

冷え性改善 / 毛細血管の強化と血流の改善 / 抗酸化作用 / 抗炎症作用 / 抗アレルギー作用 / 骨密度の低下を抑制 / ストレスの軽減など

温州みかんの薬効

日本人にとってとても馴染みが深い定番の果物・温州みかんには、「ペスペリジン」が豊富に含まれています。現在はその効果から漢方の陳皮(みかんの皮を乾燥させた生薬の一種)として利用されます。
しかし、昔の人はその働きは知らずとも経験から、干したみかんの皮をお風呂に入れて温まったり...風邪予防に役立てたり...
日常生活で健康のために役立てていたとされています。

薬との飲み合わせに注意が必要な柑橘

薬と食品には、飲み合わせ・食べ合わせが悪いものがあり、薬の作用を弱めてしまったり、逆に薬の効果を強めて副作用を起こしてしまったりすることがあるのはご存知でしょうか?

グレープフルーツの果肉には、「フラノクマリン類」という成分が含まれていて、免疫抑制系の薬や血圧を抑える薬などの服用中にグレープフルーツを食べると、相互作用によって強い薬効が出る危険性があります。この作用をもたらすフラノクマリン類は、他の柑橘にも含まれているため注意が必要です。

薬を服用中の方は、かかりつけ医や薬剤師への相談をしておきましょう。それ以外にも人に柑橘を勧める際には留意しておきたいです。

注意が必要なフラノクマリン類を多く含む柑橘

グレープフルーツ / 文旦 / メロゴールド / 橙(だいだい)/ スウィーティー / 晩白柚(ばんぺいゆ)

内山 恵太

内山 恵太

2000年生まれ、北海道出身。広告代理店で制作業務を担当した後、フリーランスのデザイナーとして独立。現在は、デザイナーとして活動する傍ら、神奈川県小田原市の150年以上の歴史を持つ柑橘農園の研修生として農業を学んでいる。果物が大好きで、特に柑橘が好き。おうちにBarのような酒棚をつくるほど、カクテルを作るのがすき。

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