うららかな春の日、名探偵シャーロック・ファームズが神奈川県小田原市江之浦の八木下農園に舞い降りた。
まずは状況を整理してみよう。八木下農園は1850年ごろから続く歴史ある柑橘農園で、生産品は一流の料理人たちがこぞって求めるほどの奥深い味。現在は八木下さん一家とシャーロック・ファームズにそっくりな研修生の4人で、9箇所もの畑を管理している。江之浦の美しい海と山を汚さないように、有機肥料にもこだわっているという。
ファームズは思った。
「なぜ味も効率も環境保全も同時に追い求めることができるんだ！？ わからない！！！ わからないけど、ヒントはきっと農園の間取りにあるに違いない！」
ファームズはさっそく八木下農園の八木下敏雄さんを訪ね、間取りの秘密を教えてもらうことに。最後まで読めば、八木下農園の創意工夫がわかるはずだ！
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調査1：トンネルの入り口にあるメカはなんだ！？
畑の入り口のトンネルでかっこいいモノレールを発見！ 江之浦は海と山に囲まれていて、柑橘栽培にはうってつけの温暖な気候。しかし、急斜面の畑での作業は大変で、特に肥料や資材などの重いものを人力で運ぶのは一苦労です。そこで、昭和40年代にこのモノレールが設置されました。今では収穫した果実や肥料、資材を効率よく運ぶために欠かせない存在です。
積極的に新しい技術を取り入れる八木下農園。もしかするとそう遠くない未来、ドローンが肥料や資材を運ぶ日がくるかも…？
調査2：ブルーベリー畑に散りばめられた枯れ枝…これは！？
モノレールがトンネルを潜った先に植えてあるのがブルーベリー。そこに積まれたたくさんの枯れ枝が目に入ります。実はこれはゴミではなく、大切な栄養なんです。ブルーベリーは普通の土には根をはらず、おがくずやウッドチップなど隙間のある土台に根をはります。その特性を利用して、柑橘類の枝の剪定をした際に出る枯れ枝を、ブルーベリーの土台・肥料として活用。枯れ枝が少しずつ分解されて、ブルーベリーの栄養になりながら土に還っていきます。枯れ枝を焼却処理する際の二酸化炭素も出さず、処理の手間も省けるので一石三鳥です。
もともと加工品用にブルーベリーの栽培を始めた八木下さん。しかし、徐々に生のブルーベリーの需要も増えていき、今ではみかんの端境期である夏季に八木下農園を支える重要な売上のひとつとなっています。
調査3：パティシエやレストランがこぞって求めるレモン、気になるゾ！
続いて、畑の右側にレモンを発見！ 無農薬で栽培されたレモンにはよく黒色や茶色の斑点を見かけますが、八木下農園のレモンには斑点や傷がほとんどなく、果実も大きくて艶やかです。その理由のひとつは、レモンを植えている場所にあります。レモンは、雨や風が原因となる「かいよう病」という病気に弱い果物です。かいよう病に感染した果実は食べることはできますが、外観品位をそこねてしまいます。かいよう病を避けるため、八木下さんは畑のなかでも比較的日当たりがよく風が当たりにくい場所にレモンを植えています。
また、同じ畑でも左側と右側では土が違います。右側は石が混ざった痩せた土で、レモンをあえて痩せた土に植えて厳しい環境で育てることで、美味しいレモンができるそうです。
調査4：ブラッドオレンジが畑の上の方にある理由は？
赤みの濃い果肉が特徴のブラッドオレンジは、比較的寒さに弱く、年平均気温が17度以上の環境が適していると言われています。八木下さんがブラッドオレンジを植えているのは、畑の真ん中から上の方。温暖な畑の中でも特に日当たりのいい暖かい場所に植えています。
八木下農園ではタロッコ種とモロ種の2品種を栽培していますが、モロ種は痩せた土の方が美味しいものが育つそう。だから右側の痩せた土に植えているんですね。
近年、ブラッドオレンジの需要は少しずつ高まっています。栽培が難しいと言われているブラッドオレンジですが、八木下農園のブラッドオレンジは赤みも強く美味しいと評判です。八木下農園の技術と試行錯誤があってこそのクオリティですね。
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味にも効率にも環境保全にも手を抜かない八木下農園の秘密を垣間見て、ファームズも大満足。ファームズが推理した通り、間取りには八木下農園の創意工夫がたくさんつまっていた。
果物の特性や、畑の環境、需要の動向など色々なことを考慮しながら作られた間取り。きっとこれからも八木下農園の畑は進化し続けるだろう。
「間取りがすべてを物語る！」
今回の役目を終えたファームズはそう言い残し、次の農園の謎を求めて旅立つのだった！
